インスリンは膵臓から分泌されると血液中に入って全身を回ります。 そして筋肉、脂肪細胞、肝臓などに達すると細胞の表面にある「インスリン受容体(レセプタ)」に結合します。
この受容体は細胞の膜を貫いています。 インスリンが受容体に結合すると受容体は酵素を使って自分自身および細胞内にある受容体基質というものに 化学変化を起こさせます。 これが引き金となって細胞内の物質に次々と変化が起こっていきます。
最終的には「糖輸送担体」(糖輸送蛋白ともいう)と呼ばれるものが、 細胞表面に移動してブドウ糖を細胞内に取り込み、血糖が下がります。
最近、「インスリン抵抗性」と言う言葉がよく使われますが、 要するにインスリンが何らかの理由によって血糖を十分に下げられない状態のことです。 インスリンが分泌されてから血糖値が下がるまでの複雑な過程のどこかで不具合が起こっているのです。
たとえばインスリンが受容体に結合するのをじゃまする物質(ある種のホルモンなど)が 存在しても血糖を下げる働きはにぶるでしょう。
また、受容体そのものに問題があってインスリンがうまく結合できないこともあります。 受容体の数が減っても血糖はうまく下がらないでしょう。 また、受容体基質とか糖輸送担体に異常が有る場合も知られています。
インスリン抵抗性の代表は肥満です。肥満ではどのようなことが起こっているのでしょうか。 肥満があると糖輸送担体の働きが悪くなることがわかっています。
また、受容体の酵素の働きが悪くなっていることも知られています。 さらに、脂肪組織での毛細血管の密度が低く脂肪細胞に接する血液の量が少ないともいわれています。 また、インスリン抵抗性があるために、膵臓がたくさんのインスリンを分泌します。 そうすると、受容体の数が減りさらにインスリン抵抗性が高度になっていきます。
脂肪細胞は、TNF−α(アルファ)という蛋白を分泌します。 これがインスリンが受容体に結合後の様々な反応をじゃますることがわかっています。
以上のことより、肥満があるとインスリンの効き目が極端に悪くなることがわかると思います。 最近インスリン抵抗性を改善する薬も使われるようになりましたが、 副作用が強く発売が中止になったものもあります。
何よりも、適切な食事療法により肥満にならないことが最も重要です。