昔から、運動習慣と免疫の間には関係があると考えられていました。 運動をするようになってからは風邪をひきにくくなった、 という人も多いと思います。これは、どういうことなのでしょうか。
免疫はおおざっぱに言うと体の中の異物を排除する働きのことです。 ばい菌などの病原体が体に入っても免疫のおかげで直ちに病気になることは少ないのです。 病原体ばかりでなく体の中に間違ってがん細胞ができてしまったときも、 免疫の働きでこれを排除します。
免疫は血液中の白血球と大いに関係があります。 今から100年位前にマラソン後の選手の白血球が増えていることがわかりました。 これが運動と免疫能の関係についての研究の始まりであると言われています。
通常白血球は血管の壁に付着しており、その一部が血液中に入って流れています。 白血球の数は通常、採血によって調べます。 したがって血液中に入っている白血球の数を調べることになります。 ステロイド剤と呼ばれる薬は壁に付着している白血球を血液中に呼び 寄せる働きがあります。 したがってステロイドを服用している患者さんの血液を調べると 白血球の数がかなり増加しています。運動中は血液中にカテコラミンといわれる物質が増 加します。このカテコラミンも血管壁の白血球を血流中に呼び寄せる働きがあります。こ れが運動により白血球が増える1つの原因であると考えられています。
その他に運動により汗をかき、血液中の水分が減少し見かけ上白血球の濃度が上昇している、 ということもあるでしょう。
また、運動により肺とか脾臓にある白血球が循環血液中に移動してくるこ ともあります。
最近では運動中にある種のサイトカインという物質が増加して、これが白 血球の産生を高めるということもわかってきています。
しかし、運動によるこれらの変化は一時的なもので、運動後数時間以内に白血球は元の 数にもどってしまうということもわかっています。 では、継続的に運動をしていると何か変化があるのでしょうか。これに関しても昔から、 多くの研究があります。継続的な運動をしていると血液中のリンパ球(白血球の一種)が増え、 リンパ球の一種であるNK細胞が増加するといわれています。NK細胞というのは抗体産生 を増加させたり、がん細胞を抑制する働きがあることがわかっています。
しかしまた一方では、過激な運動は免疫能を障害することもしられています。 程よい運動を継続的に続けることが免疫の上からも重要であると思われます。