しかし、これを証明するのはなかなか大変なことなのです。 1980年から大規模で長期にわたるDCCT(研究の名前の頭文字)と 呼ばれる研究が始められました。 アメリカとカナダの糖尿病研究者があつまり、 多数のボランティアの糖尿病患者の中から1400名余りのグループを選び出し、 長期にわたり彼らの観察が行われました。 全く合併症を持たない群と軽度の合併症を持つ群にわけて、 それぞれの群でさらに厳密に血糖コントロールを行う群と従来の治療法を継続する群にわけて 観察が行われました。
厳密な血糖コントロールを行う群ではヘモグロビンA1cを6.05%まで下げる ことが目標とされました。これらのグループは最長9年間観察されました。
さて、その結果厳密な血糖コントロールは網膜症の発症と進展防止に非常に有効である ことがわかりました。 また、微量アルブミン尿の出現と進展防止にも効果があったことが証明されました。 従来から予想されていたことがあらためて証明されたことになります。
ここで観察された糖尿病患者はすべてインスリン依存型糖尿病です。 日本で圧倒的に多いインスリン非依存型糖尿病では、 発症の時期がはっきりしないため研究が難しいのです。
現在、糖尿病で治療を受けている方は自分がいつ糖尿病を発病したを思い出してみてくだ さい。 「糖尿病」と診断された日ではなく発病した日です。 「○月○日ころから、急にのどが乾くようになったのできっとあの日が発病の日だ」 と言われる方がいるかもしれません。 しかし、それ以前から糖尿病が発病していて症状が出ていなかっただけかもしれません。 このようにインスリン非依存型糖尿病では発病の時期を特定するのはかなり困難です。
最近では職場や地域で検診が行われるようになり、ある程度発病の時期を推定すること ができるようになりました。去年の検診で何も異常がなく、今年の検診で糖尿病が発見さ れたとするとこの1年間の間に発病したと推定することができます。
検診は自分の健康のためだけでなく、臨床研究にも役立ちます。こう言った臨床研究が病 気の防止や治療に役立つことは言うまでもありません。検診は積極的に受けましょう。