さて、昔からタンパクとブドウ糖を混合しておくと、タンパクに糖が結合して新しい物 質が生成されることが知られていました。 この反応はタンパクの糖化反応といわれ、酵素の関与なしに進行します。 また、ブドウ糖の濃度が高いほど反応が進行することも知られています。 このような研究は当初、食品化学の分野で行われていたようです。
食品に限らず人体でもブドウ糖の濃度(血糖値)が高いと いろいろなタンパクが糖化されます。
赤血球の中にあるヘモグロビンもタンパクの一種なので糖化されます。 この糖化されたヘモグロビン量を測ることによって平均的な血糖の高さを類推することができます。 これがヘモグロビンA1Cと呼ばれるものです。 糖尿病で外来通院をしている方はこの言葉を知っている人も多いでしょう。 血糖値が下がってくるとヘモグロビンA1Cの値も下がってきます。 つまり、この段階の糖化は逆戻りができるのです(一旦結合した糖とタンパクが元に戻る)。 逆戻りができる段階を前期段階などといいます。
タンパクの糖化反応の前期段階で生じた物質がさらに複雑な反応を起こすと、 もう元に戻れなくなります。 これを後期段階と呼びます。 後期段階で生じた糖化物を英語の頭文字をとってAGEと呼ぶことがあります。
細胞機能の調整にはさまざまな種類のタンパクが活躍しています。 もし、このタンパクが糖化されて本来の機能を果たせない状態になるとどうなるのでしょうか。 細胞が機能できなくなることは想像に難くありません。
糖尿病の合併症を持つ動物の組織のAGE量が増加していた、と言う研究報告が多数見ら れ、AGEと糖尿病合併症の関連が盛んに研究されつつあります。
血糖値を正しくコントロールして体内にAGEをため込まないことが重要です。