糖尿病と心臓の病気


 昔から,糖尿病の人はそうでない人に比べて心臓血管系の障害の頻度が 高いといわれています。 いろいろな大規模な調査でも糖尿病があると心臓血管系の病気が 発生する頻度が高くなることが証明されています。

 心臓血管系の代表的な病気は「狭心症」と「心筋梗塞」です。 心臓は筋肉の塊でこれが収縮することにより血液を全身に送り出しています。

この心臓の筋肉に栄養分とか酸素を供給する血管が「冠動脈」と呼ばれている血管です。 冠動脈が狭くなって血液のとおりが不充分になると胸が締め付けられるように苦しくなる 「狭心症」という病気になります。

冠動脈の一部が完全に詰まって血液が行かなくなると、 その血管で養われていた心臓の筋肉は死んでしまいます。 これが「心筋梗塞」といわれる病気です。

 この2つの病気はどちらも冠動脈の動脈硬化が原因となっています。 心筋梗塞を起こした冠動脈を顕微鏡で調べてみても 糖尿病の有無による形態学的な差異はないとされています。 しかし、動脈硬化の進み方は糖尿病があると加速されます。

 狭心症も心筋梗塞も典型的な症状は激しい胸痛ですが、 糖尿病があると症状が出にくいといわれています。 全く症状がなくて検診の心電図の検査で心筋梗塞が見つかることもあります。

また、糖尿病患者に発生した心筋梗塞は心不全やショックを起こしやすく 重症になりやすいともいわれています。 これは、糖尿病があると冠動脈の動脈硬化が強く 梗塞部以外の心筋もかなり血液不足の状態に陥っているためと考えられています。

また、糖尿病患者の心筋梗塞は不整脈の合併が多いとされています。 この原因についてもいろいろなことがいわれています。

さらに糖尿病患者では冠動脈が狭くなっていないにもかかわらず、 心臓の筋肉に異常をきたして心不全を引き起こすこともあります。

また心臓自体の病気ではありませんが、糖尿病の神経障害がすすんで 自律神経も障害されると心臓の鼓動の速さの調節に異常をきたすこともあります。 正常では息を吸い込むときと吐き出すときでは心臓の鼓動の速さが異なります。 しかし、自律神経が障害されるとこの違いがなくなってきて、 最終的には常に同じ速さでしか脈を打たなくなります。 この状態になると「突然死」がおこる危険があります。

特に症状がなくても検診などで定期的に心電図をとることは重要であると思われます。


目次(6)に戻る 前の号を読む 次の号を読む ホーム・ページに戻る