吸入型インスリン製剤の終焉


吸入型インスリン製剤というのをご存じでしょうか。通常のインスリン製剤は皮下注射で体内に投与します。最近は注射器や針の性能が向上しほとんど痛みを感じなくなってきています。しかし、やはり、注射という行為に抵抗感を持っている人も多いでしょう。

そこで、考えられたのが、「吸入型インスリン製剤」です。これは、インスリンを粉末にして、これを吸入するというものです。吸入型インスリン製剤の研究は古くから行われていましたが、実用化するには至っていませんでした。

しかし、ついに2006年米国P社が、吸入型インスリン製剤を発売しました。品薄になるほど売れるのではないかという予想も有りました。

しかし実際にはほとんど売れませんでした。専用の吸入器を写真で見たことがありますが、かなり大きなものです。そして、肝心のインスリンとしての効き目は、今ひとつだったようです。さらに価格も通常のインスリンの5倍ほどします。

また、発売前から吸入型インスリン製剤は、閉塞性肺疾患の人の呼吸機能を悪化させるということも知られていたため、医療機関でも積極的には勧めていなかったようです。

こうした事情もあり、P社では2007年10月に発売を中止しました。吸入型インスリンの発売を目指して開発をしていた他社も、次々に開発を中止しました。

事実上、吸入型インスリン製剤は日の目を見ることなく終焉を迎えたことになります。


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