糖尿病性腎症と抗生剤


糖尿病性腎症は、糖尿病の三大合併症の一つです。以前はタンパク尿が持続する状態になった腎症はもう、改善することはないと考えられていました。しかし、最近の研究では持続性タンパク尿の時期に入っても、厳密な血糖コントロール、血圧管理等により、状態が改善されることが臨床的にも明らかになってきています。

さて、動物実験の段階ではリウマチの治療に使われる免疫抑制剤が、糖尿病性腎症の進行を食い止める働きがあるらしいことがわかってきました。しかしながら、免疫抑制剤は副作用も強く、長期にわたって糖尿病の人に使用するのは不可能でしょう。

なぜ免疫抑制剤が腎症の進行を抑制するのかはよくわかっていませんが、免疫抑制剤の抗炎症作用が関係していることが示唆されています。

一方、マクロライドと呼ばれている抗生剤も抗菌作用の他に抗炎症作用があることが知られています。最近、マクロライドがインフルエンザの症状を軽くするのではないかとか、感染を抑制するのではないかという実験室レベルの実験結果が発表され、注目を集めています。この抗炎症作用が、糖尿病性腎症に対して腎臓を守る方向に働くのではないかとも言われています。

マクロライドは、すでにある種の呼吸器疾患に長期投与が広く行われ、その効果が確認されています。今後は、マクロライドの糖尿病性腎症に対する効果、安全性の研究が進んでくるものと思われます。


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