「軽症糖尿病」の明確な定義はまだありません。
「発症してまだそれほど月日がたっておらず、最小血管合併症がまだない時期の糖尿病」とでもいったところでしょうか。
「軽症」という用語はともすれば、「放置していてもたいしたことにはならない」という意味にとられがちです。特に、糖尿病の患者さんは自分に都合の良いように物事を解釈したがる傾向があります。
しかし、この軽症糖尿病の時期から、しっかり治療を行う必要があるのです。
この時期の糖尿病には、いくつかの特徴があります。
その一つは、空腹時血糖はさほど高くないのですが、食後の血糖が高いのです。これは、食後の急激な血糖値の上昇に対して、インスリンの分泌がすばやく起らないためと考えられています。
また、この時期の糖尿病では、「インスリン抵抗性」が存在しており、食後に遅れて分泌されたインスリンが、なかなか血糖を下げないため、膵臓のベータ細胞(インスリンを作っている細胞)はさらにがんばってダラダラとインスリンを出し続けます。
結局、インスリンのトータルの分泌は正常の人より多くなってしまい(遅延過剰分泌)、これが膵臓のベータ細胞を疲弊させ、ついには空腹時にも血糖値が高くなります。
また、インスリンの遅延過剰分泌が動脈硬化症を進展させるとも言われています。これは、心筋梗塞や脳梗塞にもつながる深刻な病態です。
軽症糖尿病では肥満・高血圧・高脂血症などを伴っていることも多く、さらに動脈硬化症の進展を助長します。
軽症糖尿病の時期にこそ、しっかりした食事療法と、適切な運動療法を行い、食後の高血糖を防ぐことが大事です。