さて、昔から糖尿病があると尿路感染症が起きやすく、また感染症が慢性化しやすいとも言われています。これは糖尿病があると、免疫の力が低下することに原因があります。最近は具体的にどんな免疫がどのように傷害されているかがかなり詳しく解明されています。
一般に尿路感染症の原因となる細菌(起因菌)は大腸菌であるといわれています。しかし、糖尿病がある場合、起因菌は大腸菌よりも「クレブシェラ」という細菌の方が多いことがわかっています。これは、より重症の感染症を引き起こします。
尿路感染症の中で最も多いのは、膀胱炎です。糖尿病がある場合、糖尿病がない人に比べ数倍の頻度でみられると言われています。特に女性の頻度が高く男性の2倍程度あると言われています。
糖尿病があると腎盂炎の頻度も高まり、非糖尿病者の数倍の頻度でみられると考えられています。
腎盂炎の中の特殊型として気腫性腎盂炎というのがあります。これは、細菌がガスを産生し、腎臓や膀胱内に気泡が発生するというものです。希な病気ですが糖尿病が合併する率が高いと言われています。非常に重篤な病気で死亡率も高いと言われています。
このほかに、糖尿病があると細菌以外にカビの仲間が尿路感染症を起こすこともあります。
また、糖尿病があると尿路感染症がおこっても症状が出にくく、発見が遅れ重症化の原因の一つであると考えられています。また、感染が起こると、血糖上昇をもたらし、さらに免疫の力が落ち、悪循環を繰り返すとも考えられています。
日頃から、食事療法を厳守し良好な血糖コントロールを維持し、規則正しい生活により、免疫の力を落とさないようにすることが重要です。