高齢者の糖尿病


高齢者人口の増加に伴い、高齢者の糖尿病が増加しています。高齢者の糖尿病では何か特 徴的なものがあるのでしょうか。若いときに発症して高齢になった場合と、高齢で発症し た場合とで何か違いがあるのでしょうか。

多くの研究者が、このことに関して様々な研究をしています。

糖尿病でない人でも30歳以降10年ごとに空腹時血糖は1−2mg/dl上昇し、食後の血糖 は10年ごとに15mg/dlずつ上昇するという研究もあります。年を取ると少しずつ糖尿病 になりやすい体になっていくということでしょうか。

インスリンの面で考えると、当然加齢とともにインスリンの合成やら分泌が悪くなること が想像されます。また、このことを明らかにした研究もみられます。

また、年を取るとインスリンの効き目が悪くなるらしいという、実験データなどもみられ ます。

高齢になると筋肉が減少して糖の取り込みが減少することも想像に難くないと思われます。実験的にはインスリンが受容体に結合するまでの過程は、高齢でも異常は認めら れず、その後の過程で何らかの障害があり、糖の取り込みが悪くなることもわかってきて います。また、これが遺伝と関連しているらしいこともわかってきています。

さらに、年を取ると筋肉が減少するとともに相対的な脂肪の増加をみます。脂肪組織がイ ンスリンの効き目を悪くすることは、この連載でも何回か触れています。

それに加え、高齢になると運動量も減ってきますので、ますますインスリンの効き目が悪 くなり糖尿病の危険が高くなります。

 また、高齢で発症した糖尿病は若いときに発症した糖尿病よりも一般に程度が軽いこと も知られています。

高齢者と糖尿病の関連については、今後さらにいろいろな研究が積み重ねられていくこと でしょう。しかし、過食をせず、適度な運動を心がけ、肥満を防止することは年齢に関係 なくもっとも重要なことでしょう。


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