糖尿病とサイトカイン


動物の体は細胞から成り立っています。 私たちの体の中では原始的な細胞がより進化した細胞に変化(分化)したり、 分裂して数を増やし(増殖)たりしています。

この分化と増殖がそれぞれの細胞で勝手に起こるとしたら、 これはかなりまずいということは想像がつくと思います。 おそらく細胞と細胞が連絡を取り合って生体に有利なように分化と増殖のバランスを取っているに違い有りません。

この細胞同士の情報交換に「サイトカイン」とよばれている物質が使われています。

これをもうちょっと身近な例で考えてみます。 みなさんがよく使うWindows(R)でもこのサイトカインのような働きをするものが使われています。

ご存知のようにWindowsではワープロソフトと表計算ソフトなど複数のソフトを同時に起動することが出来ます。 画面は一つしかないので表計算ソフトの一部または全部が、 ワープロソフトに隠されてしまうこともあるでしょう。

重なって見えなくなるということは、その部分の画面が消されて違うものに書きかえられてしまったのです。 そして、今度はワープロソフトが別な場所に移動するなりウィンドウサイズが変更になって今まで見えなかった 表計算ソフトの部分が見えてきたりすることもあります。

つまり表計算ソフトは他のソフトに隠されて消された部分をまた、書き直しているのです。

しかし、表計算ソフトを作った人は、これを作っている間にいつどの部分が隠されるのか予測など出来るはずもありません。 では、どうしてこのようなことが可能になったのでしょうか。

これは、表計算ソフトが「メッセージ」と呼ばれるものを受け取って、

「あ、この部分を書き直さなくてはいけない!」

ということを知ることにより可能になったのです。

このメッセージはシステムから来ることもあれば、他のソフトから送られてくることもあります。 また、自分自身で自分に送ることもあります。お互いにメッセージを送り有って不都合が起きないようにしているわけです。 (注 この説明はあまり正確ではありませんが、わかりやすくするためにわざとに不正確に書いています)

メッセージは星の数ほど種類がありますが、 ここではとても説明し切れませんので興味のある方はご自分で調べてみてください。

話が脱線してしまいましたが、要するに細胞同士の連絡の手段の一つとしてサイトカインが存在します。 サイトカインの種類も星の数ほど発見されています。 生体が生存するためにサイトカインは非常に重要な働きをしていますが、 時にはこのサイトカインが思わぬ悪さをすることも知られています。

糖尿病のいろいろな病態をサイトカインの立場で説明しようとする論文も多数見られます。

今回はスペースがなくなってしまったので、またの機会に具体的なことを書くことにします。


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