あまり聞き慣れない言葉だと思いますが、 かなり以前から実際の診療で使われています。
インスリンは膵臓で作られますが、インス リンの一歩手前の物質に「プロインスリン」というのがあります。このプロインスリンか ら、一部の構造が切り離されてインスリンとなります。この、切り離された部分がCペプ チドといわれているものです。
ですから、インスリンの分子が1つできるたびにCペプチ ドの分子1個ができます。Cペプチドは殆ど代謝されずに尿中に出るため、1日分の尿を ためてこの中のCペプチドを測定すれば、インスリンがたくさん出ているのかあまり出て いないのかがわかります。この測定値は治療法を決定する上でも重要な要素となります。
つい最近まではCペプチドというのは生物学的に何の働きもしないと思われていました。 しかし、数年前からいろいろな作用があるらしいということがわかってきました。
その作用の多くは糖尿病の合併症に対して、 進展を抑制するなどよい方向に働くらしいというものです。
たとえば、糖尿病のラットにCペプチドを注射すると網膜の血流が改善したり、 神経障害で鈍くなった神経の伝導速度を改善するという実験があります。
また、別の研究者はCペプチドが筋肉の血液のめぐりをよくして、 ブドウ糖の取り込みを促進する(その結果として血糖が下がる)のではないかといっています。
今後この方面の研究が進み、将来的には糖尿病の治療に応用されるかもしれません。し かし、たとえCペプチドが治療薬として使われるようになったとしても食事療法と適度な 運動が基本であることに変わりはないでしょう。