同じ量のインスリンがあっても血糖値がよく下がる場合と、 あまり下がらない場合があります。 後者についてはインスリンの効き具合が悪いので「インスリン抵抗性」がある、といいます。
かなり以前よりインスリン抵抗性と高血圧は関係がある ということは多くの研究者に指摘されていました。
インスリン抵抗性の程度と血圧の間には相関関係があるということもわかっています。 肥満のない高血圧の患者では、高血圧のない人に比べてインスリン抵抗性が強い ということもわかってきています。
一般的には、インスリン抵抗性があると血糖を維持するために多くのインスリンが分泌されます。 従って血液中のインスリンの濃度は高くなります。 これを高インスリン血症といいます。
血液中にインスリンが多量にあると腎臓でのナトリウムの排泄が低下します。 これにより水分が血管にたまりやすくなり高血圧が生じることが考えられます。
また、高インスリン血症は交感神経を緊張させ、これによって血圧が上がるともいわれています。
インスリン抵抗性が高血圧を生じさせる原因の一つは 今述べたように高インスリン血症が関係しているということはかなり確実なようです。 しかし、これですべてが説明できるわけではありません。
たとえば、インスリノーマという腫瘍があります。 この腫瘍は勝手に多量のインスリンを分泌します。 当然インスリノーマの患者さんは高インスリン血症になっています。 しかし、インスリノーマの患者さんが皆ひどい高血圧かというとそんなことはありません。 また、手術で腫瘍を取り除いた後でも血圧に変化はないといわれています。
また、インスリン受容体異常症という病気があります。 インスリンが作用するためにはインスリンが、 インスリン受容体という細胞表面にある特別な装置に付着しなくてはいけません。 このインスリン受容体に異常があるとインスリンは作用を発揮できなくなります。 従って膵臓から多量のインスリンが分泌されます。 しかし、インスリン受容体異常症で血圧が高くなるということはありません。
インスリン抵抗性で高血圧が生じるメカニズムは、 単純なものではなくいろいろな要素が複雑に絡み合っているものと考えられます。
では、どんな場合にインスリン抵抗性が増強するのでしょうか。 一番よい例は肥満です。肥満があると確実にインスリン抵抗性が増強します。 従って糖尿病では、まず肥満を是正することが重要です。