インスリンの効き具合


最近、インスリン抵抗性とか、インスリン感受性などという言葉をよく耳にします。 これは一体何なのでしょうか。 ごく簡単にいうと「インスリンの効き具合」ということです。 誰でも、インスリンを注射されると血糖値が下がります。 しかし、個人差があり同じ量のインスリンを注射しても血糖の下がり方はいろいろです。 注射する量をその人の体重1kgあたりの量に換算して注射しても血糖の下がり方には個人差が生じます。 同じことが、自分の膵臓から出ているインスリンについても言えます。 少量のインスリンで血糖がよく下がるときインスリン感受性が高いといいます。 血糖を下げるのに大量のインスリンが必要なときインスリン感受性が低い(悪い)とか、 インスリン抵抗性がある、などといいます。 インスリン感受性が悪い人では、同じものを食べたときでも 血糖の下がりが悪いためよりたくさんのインスリンが分泌されます。 膵臓が、元気なうちは大量のインスリンを出して何とか血糖値を正常に保てるのですが、 これが長期間続くとついにはインスリンを出す細胞が疲れてしまい、 インスリンをあまり出せなくなってしまうこともあります。 こうなると、血糖値はどんどん上がります。 では、インスリン感受性が悪くなるのはどんなときでしょうか。 一番よくあるのが太り過ぎです。肥満があるとインスリンの感受性が低下してよりたくさんのインスリンを必要とします。 従って太り気味の人(糖尿病ではない人)の血液中のインスリンを調べてみると必ず、 正常より高くなっています。糖尿病の人でも正常よりインスリンが多くなっている人もいます。 こういう場合、やがてインスリンを分泌している細胞が疲れ果ててインスリンの出方そのものが悪くなってしまいます。 また、血液中のインスリンが多すぎると動脈硬化の原因になるとも言われています。 では、インスリン感受性とか、抵抗性を具体的に測定する方法はあるのでしょうか。 古くから、いくつかの方法が知られています。 1つは、薬を使って自分の膵臓から出るインスリンを完全にブロックしてしまう方法です。 そうしておいて、注射で外から一定のブドウ糖とインスリンを体内に入れてやり血糖値をはかります。 当然インスリン感受性が悪ければ血糖は高いし、よければ低いはずです。しかしこの方法は、 いくつか問題点があります。 自前のインスリンをブロックしてしまう薬は、心臓に影響を及ぼすので心蔵に病気を持っている人では使えません。 また、血糖値が下がったり、あがったりすることにより、インスリン以外のホルモンが分泌されてしまい、 これがまた血糖値に影響して正確さに問題が生じることもあります。 第2の方法は、やはり注射で一定量のインスリンを持続的に体に入れます。 そのままですとどんどん血糖値が下がってしまいますので、これが空腹時血糖になるようにブドウ糖の点滴をします。 血糖値の測定は、かなり頻繁に行いブドウ糖の注入量を細かく加減しなくてはいけません。 インスリン感受性のよい場合は、当然注入するブドウ糖の量が多くなります(多く入れないと血糖が下がりすぎてしまう)。 インスリン感受性が悪いと注入するブドウ糖の量が少なくなります。 血糖値は空腹時血糖の値に維持されますのでいろいろなホルモンの影響は受けないと言われています。 しかし、この測定をするには高価な機械が必要でありどこの病院でもできるというものではありません。 第3の方法は、インスリンや、ブドウ糖が体内でどのように分布し消費されるかを数式モデルを用いて ある程度推測することができます。 従って、理論的にブドウ糖を注射されたときに血糖の上がり具合と時間経過の関係を計算することができます。 これを元にインスリンの効き具合を数値化しようとするものです。 採血の回数がかなり多くなりますが、特別な道具は不要です。 しかし、結果の解釈には複雑な計算を必要としコンピュータを用いなくてはいけません。 ほかにも、いろいろ検査法はあるのですが代表的なものについて述べてみました。 血糖値のように少しだけ採血をしてそれで正確なインスリン感受性がわかるような検査法は今のところありません。 肥満のある人は、確実にインスリン感受性が悪くなっているのでこれを是正しなくてはいけません。 ごく最近このインスリン感受性を改善する薬というのが発売になりました。 しかし、一番の薬は肥満の人は肥満を是正することでしょう。


目次(4)に戻る 前の号を読む 次の号を読む ホーム・ページに戻る