糖尿病薬の効き目と遺伝


ここ、10数年の間に糖尿病治療に使われる薬がいろいろ開発されてきました。

昔から使われている薬に「グリベンクラミド」(ダオニール、オイグルコンなど)というのがあります。これは、主に膵臓に働いてインスリンの分泌を促して血糖値を下げると考えられています。最近これと同系統の薬で「ナテグリニド」(ファスティック)という薬もよく使われるようになってきています。これは、速効性の薬で食直前に服用して、食後の高血糖を押さえます。さて、これらの薬を服用したときの効き目は患者さんによってさまざまです。

きちんとした食事療法や適切な運動療法を行っているかどうかも、もちろん関係するでしょう。また、薬の吸収のされ方によっても効き目に違いが出てくる可能性もあります。 特に、ナテグリニドは食直前に服用しないと効果はほとんど期待できません。

通常、飲み薬は体に吸収された後、体内の酵素により代謝され別の物質になり排泄されます。薬として効き目をもった形で長らく体内に存在すれば、強い効果を発揮し、すぐに代謝されて薬としての効き目をもたない形になったとしたら、効果は弱いはずです。

最近の研究では、糖尿病薬の代謝に関係する酵素が人により微妙に異なることがわかってきています。それは、遺伝により規定されており具体的にどういった遺伝子と関係しているかも解明されつつあります。つまり、糖尿病薬の効き目の善し悪しが人により異なる原因の一つには遺伝が関係している可能性が高いのです。

将来的には、遺伝子を調べてひとりひとりの患者さんに適した糖尿病薬が処方される時代が来るかもしれません。

しかし、どのような時代になったとしても糖尿病治療の原則は食事療法と適切な運動療法であることに変わりはないでしょう。


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