糖尿病と抗酸化物質


最近は、健康食品や化粧品などの分野で「抗酸化物質」が大流行です。体の中の「活性酸素」が悪役で、これをやっつける正義の味方が「抗酸化物質」というわけです。非常にわかりやすい図式なので、一般受けするのでしょう。

糖尿病の合併症の発症にも活性酸素が何らかの関係があると言われています。

古くは、動物の寿命と活性酸素も関係があると言われていました。ほ乳類は、体温が一定です。体表面からはどんどん熱が逃げていくので、体温を一定に保つには、体内でどんどん熱を発生させなくてはいけません。体が小さいほど体重当たりの体表面積が大きくなります。その分熱が外に逃げて行きやすいため、どんどん熱を発生させなくてはいけません。どんどん熱を発生させた分だけ、活性酸素も大量に作られ、寿命が短いという説です。

確かに、ほ乳類では体の大きい動物は、小さい動物より寿命が長いものが多いようです。

しかし、そう単純なものではないこともわかってきています。寿命に関して言えば必ずしも活性酸素が一方的な悪者ではないことも知られています。

さて、「抗酸化物質」の方を見てみると、最近では「エラグ酸」というのが大流行です。各種の癌を防ぎ、美白にもよいというのです。エラグ酸を含む健康食品や化粧品が大量に出回っています。さらに、最近ではウィスキーにもエラグ酸が含まれていて、これが糖尿病の合併症を防ぐ可能性があるとの報道もありました。

しかし、残念なことに具体的に、どの抗酸化物質をどのくらいとれば、どの病気が何パーセント防げるのかとか、いうことまでは、ほとんどわかっていません。

また、健康によいと思われている抗酸化物質もある状態では、逆に体に害をあたえるということも少しずつわかってきています。

「○○が○○に良い」と言うことが言われると、その物質を極端に大量に摂取しようとする人が少なくありません。これは、大変危険なことなので注意する必要があります。


目次(13)に戻る 前の号を読む 次の号を読む ホーム・ページに戻る