医学教育とコンピュータ


どのような分野にもコンピュータは着実に入り込んできています。最近の大学ではどの学部でも入学するとすぐに、パソコンの扱い方の授業があるようです。医学部も例外ではありません。これからの世の中ではパソコンを扱えないと、どうにもならないので、これはこれで結構なことと思われます。

ところが、その内容にいささか問題があります。

一例を挙げると何でもかんでも、文書はある特定のワープロソフトで作ることを勧めています。レポートなどをそのワープロソフトで書かせて、電子メールに添付して提出させている大学も多いことでしょう。しかし、これは常識的に大変危険でかつ無駄なことです。

ワープロで作ったファイルは「バイナリファイル」であり、巨大なファイルサイズとなります。

なぜかというと、文字情報だけではなく、フォントの種類、大きさ、色、その他特にさしあたり必要のない、いろいろな情報を含ませているからです。

さらに、マクロといわれるプログラムの一種を含ませることも可能です。これは、本物のプログラムとは異なり、特別な知識無しに素人でも簡単に作ることができます。その文書を開いたとたんにその人のハードディスクをきれいさっぱり消去してしまうようなマクロも可能です。

こういう危険で、サイズの大きなものをメールに添付してやりとりすることは、昔からインターネットの世界では禁忌とされてきました。これを率先して学生に勧めているのですからおかしな話です。

特に医学関係の学部にこの傾向が強いように思われます。キーボードからは「2バイト文字」しか打ったことがない、という医学関係者も少なくありません。

現在でも医学関係の組織はIT分野で大幅な遅れを取っているといわれていますが、将来さらに遅れがひどくなることは目に見えています。

さて、某大学のメール・サーバーは最近バイナリファイルを添付したメールを受け付けないように設定変更をしたようです。筆者の危惧したとおりのことが起こっていないことを祈るばかりです。

話は変りますが、糖尿病に関連した検査は、結果が数値で出てくるものがほとんどです。この分野でコンピュータを活用して有益な研究をする研究者がぞくぞくと出てきてもらいたいものです。


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