糖尿病とアルコール飲料
講演会などで、アルコールについての質問が多くでます。
「アルコールは飲んでも良いのか、どのくらいの量ならいいのか。」
「日本酒とウィスキーではどちらがよいのか」などなど。
しかし、アルコールに関しては、なかなか明確に答えられないことも多いのです。
アルコール飲料が、生体に及ぼす影響は、実に複雑です。
糖尿病の患者さんは、体内の代謝異常を有しているわけですから、
そこにアルコールが絡んでくると非常に複雑なことが起こってきます。
そして多くの場合、糖尿病を悪化させる方向に導きます。
場合によっては、重大な代謝異常(アルコール性ケトーシス、
アルコール性低血糖、アルコール性乳酸血症)を引き起こし、
生命が危険になることもあります。
また、常用量の飲酒が、糖尿病のコントロールを悪化させる理由は、
食事療法の乱れにつながる、アルコール自体が1g約7kcal(体内で利用されるのはその70%)
のエネルギーを持っていること、
他の薬剤への影響があることなどがあげられます。
したがって、薬物療法(経口血糖降下剤・インスリン注射)
をしている患者さんでは、アルコールは厳禁と考えた方がよいでしょう。
しかし、アルコールの日本における社会的意義を考えると、
全ての糖尿病患者について、禁止することはできません。
食事療法のみで血糖がよくコントロールされている患者さんについては、
適量ならよしとせざるをえません。
では、どのくらいが適量なのでしょうか?
これについては、学者間でも意見の一致を見ていません。
しかし、大まかにいうと1日に2単位以内(160kcal)で、
週に少なくとも2日は、飲まない日を作ることでしょう。
具体的には、ビールでは大瓶2/3本、日本酒では約150ml(約8勺弱)、
焼酎25度では115ml(約6勺強)、ウィスキーでは、70ml(ダブル1杯)
といったところでしょうか。
もちろん合併症のある人、アルコールにおぼれやすい人、
何らかの理由で、医師から止められている人、薬物療法を行っている人は禁物です。
何事も、程々に適量を守って楽しく生活したい物です。
目次(1)に戻る
前の号を読む
次の号を読む
ホーム・ページに戻る