肥満に関係のある遺伝子


昔から、肥満者が同一家系内によく認められることから肥満はある程度遺伝するのではないかと考えられていました。 実験動物などでも遺伝的に肥満するものは数多く知られています。 遺伝するからには遺伝のもととなる遺伝子があるはずです。

最近の遺伝子に関する研究の進歩はめざましく、いろいろな病態や病因について遺伝子レベルでの解明が進んでいます。 その中でも、最近注目されているのがβ3アドレナリン受容体遺伝子の異常です。

その前に、受容体とは何でしょうか。簡単に言うと細胞の鍵穴です。 ホルモン(鍵)が細胞に働きかけてその作用を発揮するには、 細胞側にホルモンにあった鍵穴が必要です。 細胞表面にはたくさんの種類の鍵穴が用意されています。 この鍵穴は、遺伝子の情報をもとに作られます。 従って遺伝子に異常があると正確な鍵穴が作られません。

アドレナリンというのはホルモンの一種でいろいろな作用がありますが、 その中の一つに脂肪の分解というのがあります。 これが脂肪細胞のβ3アドレナリン受容体に結合すると作用の一つとして脂肪の分解が起こります。

従ってこの受容体に異常があると脂肪の分解が起こりにくく 肥満しやすくなるのではないかと想像されます。 一番手っ取り早いのはこの受容体を持たない動物を作って観察することです。 最近ではこういう動物は遺伝子操作により人為的に作り出すことができます。 それによるとやはり、β3受容体を持たない動物は肥満することがわかっています。 また、遺伝的に肥満するある種の動物のβ3受容体を 調べてみるとこの受容体が極端に少ないこともわかっています。

人間についても詳しく調べられており、 ヒトのβ3アドレナリン受容体の構造もほぼ完全に解明されています。

ある種族ではこの受容体の構造の一部に異常のあるものが高率に発見されています。 つまりこの種族では異常な受容体を作らせる遺伝子を持つものが多いということです。 そしてこの種族では肥満と糖尿病が高率に見られます。

このβ3受容体の異常の種類についてもいろいろなものが知られています。 日本人においてもβ3受容体の構造の一部に 異常のあるものはかなり高率にいるということが推測されています。 残念ながら異常が発見されてもこれを治す方法は今のところありません。 このような人は減量が困難であり、 さらにいっそう食事療法を徹底しなくてはいけません。


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