第157章 グローバル・アトム その1


今回は、グローバル・アトムについて解説します。 使い方はローカル・アトムとほとんど同じです。 関数名にGlobalがつくだけです。グローバル・アトムは他の アプリケーションからも参照することができます。 また、ローカルと違うところはGlobalAddAtom関数で 文字列をアトムテーブルに格納したら、アプリケーションが 終了しても自動的に削除してくれません。したがって 自分でGlobalDeleteAtomしなくてはいけません。



今回作るプログラムは、データ(文字列)をグローバル・アトム・ テーブルに格納して他のアプリケーションからそのデータを 読み出そうというものです。一種のプロセス間通信です。 今回は、送信側のアプリケーションを作ります。

メニューの「メッセージ」「送信」を選択すると 左のようなダイアログボックスが出ます。このエディットコントロールに 送信したい文字列を書きこみます。エディットコントロールは 複数行入力可能にしておきます。 OKボタンを押すと入力された文字列がグローバル・アトム・テーブルに 格納されます。



では、プログラムを見てみることにします。

// atom02.rcの一部 ///////////////////////////////////////////////////////////////////////////// // // Menu // MYMENU MENU DISCARDABLE BEGIN POPUP "ファイル(&F)" BEGIN MENUITEM "終了(&X)", IDM_END END POPUP "メッセージ(&M)" BEGIN MENUITEM "送信(&S)", IDM_SEND END END ///////////////////////////////////////////////////////////////////////////// // // Dialog // MYDLG DIALOG DISCARDABLE 0, 0, 143, 85 STYLE DS_MODALFRAME | DS_CENTER | WS_POPUP | WS_CAPTION | WS_SYSMENU CAPTION "通信メッセージ" FONT 9, "MS Pゴシック" BEGIN DEFPUSHBUTTON "OK",IDOK,7,64,50,14 PUSHBUTTON "キャンセル",IDCANCEL,86,64,50,14 EDITTEXT IDC_EDIT1,7,7,129,51,ES_MULTILINE | ES_AUTOHSCROLL | ES_WANTRETURN END

これは、何の変哲もないメニューとダイアログボックスのリソース・スクリプトです。

// atom02.cpp #ifndef STRICT #define STRICT #endif #include <windows.h> #include <windowsx.h> #include "resource.h" LRESULT CALLBACK WndProc(HWND, UINT, WPARAM, LPARAM); LRESULT CALLBACK MyDlgProc(HWND, UINT, WPARAM, LPARAM); ATOM InitApp(HINSTANCE); BOOL InitInstance(HINSTANCE, int); char szClassName[] = "atom02"; //ウィンドウクラス HINSTANCE hInst; //インスタンスハンドル ATOM aMyAtom; UINT WM_MYMSG;

WM_MYMSGはグローバル・アトム・テーブルにデータを格納したら すべてのトップレベル・ウィンドウに送るメッセージです。

int WINAPI WinMain(HINSTANCE hCurInst, HINSTANCE hPrevInst, LPSTR lpsCmdLine, int nCmdShow) { MSG msg; //ウィンドウメッセージとしてWM_MYMSGを登録する WM_MYMSG = RegisterWindowMessage("communication"); if (!InitApp(hCurInst)) return FALSE; if (!InitInstance(hCurInst, nCmdShow)) return FALSE; while (GetMessage(&msg, NULL, 0, 0)) { TranslateMessage(&msg); DispatchMessage(&msg); } return msg.wParam; }

プログラムが始まったらすぐに、WM_MYMSGをRegisterWindowMessageで ウィンドウメッセージとして登録します。

UINT RegisterWindowMessage( LPCTSTR lpString );

lpStringには、適当な文字列を指定します。受信側の アプリケーションでも同じ文字列を指定します。 この関数を使うことによりメッセージがこのシステムでユニークであることが 保証されます。この関数が失敗したときは0が返されます。成功したときは メッセージIDが返されます(0xC000から0xFFFF)。

//ウィンドウ・クラスの登録 ATOM InitApp(HINSTANCE hInst) { WNDCLASSEX wc; wc.cbSize = sizeof(WNDCLASSEX); wc.style = CS_HREDRAW | CS_VREDRAW; wc.lpfnWndProc = WndProc; //プロシージャ名 wc.cbClsExtra = 0; wc.cbWndExtra = 0; wc.hInstance = hInst; //インスタンス wc.hIcon = LoadIcon(NULL, IDI_APPLICATION); wc.hCursor = LoadCursor(NULL, IDC_ARROW); wc.hbrBackground = (HBRUSH)GetStockObject(WHITE_BRUSH); wc.lpszMenuName = "MYMENU"; //メニュー名 wc.lpszClassName = (LPCSTR)szClassName; wc.hIconSm = LoadIcon(NULL, IDI_APPLICATION); return (RegisterClassEx(&wc)); } //ウィンドウの生成 BOOL InitInstance(HINSTANCE hInstance, int nCmdShow) { HWND hWnd; hInst = hInstance; //グローバル変数にコピー hWnd = CreateWindow(szClassName, "猫でもわかるアトム(送信用)",//タイトルバーにこの名前が表示されます WS_OVERLAPPEDWINDOW,//ウィンドウの種類 CW_USEDEFAULT, //X座標 CW_USEDEFAULT, //Y座標 CW_USEDEFAULT, //幅 CW_USEDEFAULT, //高さ NULL, //親ウィンドウのハンドル、親を作るときはNULL NULL, //メニューハンドル、クラスメニューを使うときはNULL hInstance, //インスタンスハンドル NULL); if (!hWnd) return FALSE; ShowWindow(hWnd, nCmdShow); UpdateWindow(hWnd); return TRUE; }

いつもとたいして変わりません。後から、ダイアログボックスを 作るとき必要になるのでインスタンスハンドルをグローバル変数に コピーしています。

LRESULT CALLBACK WndProc(HWND hWnd, UINT msg, WPARAM wp, LPARAM lp) { int id; switch (msg) { case WM_COMMAND: switch (LOWORD(wp)) { case IDM_END: SendMessage(hWnd, WM_CLOSE, 0, 0); break; case IDM_SEND: DialogBox(hInst, "MYDLG", hWnd, (DLGPROC)MyDlgProc); break; } break; case WM_CLOSE: id = MessageBox(hWnd, "終了してもよいですか", "終了確認", MB_YESNO | MB_ICONQUESTION); if (id == IDYES) { DestroyWindow(hWnd); } break; case WM_DESTROY: PostQuitMessage(0); break; default: return (DefWindowProc(hWnd, msg, wp, lp)); } return 0; }

メニューから「送信」(IDM_SEND)が選ばれたら、ダイアログボックスを 出すようにしています。他はいつもと同じです。

LRESULT CALLBACK MyDlgProc(HWND hDlg, UINT msg, WPARAM wp, LPARAM lp) { char szBuf[256]; switch (msg) { case WM_INITDIALOG: SetFocus(GetDlgItem(hDlg, IDC_EDIT1)); break; case WM_COMMAND: switch (LOWORD(wp)) { case IDOK: Edit_GetText(GetDlgItem(hDlg, IDC_EDIT1), szBuf, sizeof(szBuf)); aMyAtom = GlobalAddAtom(szBuf); SendMessage(HWND_BROADCAST, WM_MYMSG, (WPARAM)aMyAtom, 0); Sleep(500); GlobalDeleteAtom(aMyAtom); EndDialog(hDlg, IDOK); return TRUE; case IDCANCEL: EndDialog(hDlg, IDCANCEL); return TRUE; } return FALSE; } return FALSE; }

ダイアログボックスのプロシージャです。 OKボタンが押されたらエディットコントロールから、文字列を取得して GlobalAddAtom関数でアトム・テーブルに文字列を格納しています。 そして、そのあと、SendMessage関数でWM_MYMSGをすべてのトップレベルウィンドウに 送信しています。

ATOM GlobalAddAtom( LPCTSTR lpString //文字列 );

文字列をグローバル・アトム・テーブルに格納して、この文字列を 識別するユニークな値(ATOM)を返します。失敗すると0を返します。

SendMessage関数で第1引数をHWND_BROADCASにすると、すべての トップレベルウィンドウにメッセージを送信することができます。 ここで、WM_USERなどを送信しても他のアプリケーションでは 受け付けません。

さて、この後すぐにGlobalDeleteAtom関数を実行すると、受信側で 処理がすまないうちにATOMが削除されてうまくいかないことがあります。 これを、防ぐには受信側でGlobalDeleteAtom関数を実行するという手も 考えられます。しかし、受信側のアプリケーションが実行されていなかった 場合問題ですね。また、複数の受信アプリケーションが実行されていた場合も 問題です。そこで、苦肉の策として0.5秒ほどSleepしてからGlobalDeleteAtom関数を 実行することにしました。少なくとも筆者の環境はこれで大丈夫でした。 しかし、あまりうまい手ではないですね。

ATOM GlobalDeleteAtom( ATOM nAtom // 削除するアトム );

グローバル・アトムの参照カウントを1減らします。参照カウントが0に なった場合はテーブルからアトムを削除します。GlobalAddAtom関数を 実行した回数だけGlobalDeleteAtom関数を実行する必要があります。

今回は、グローバル・アトムを利用した通信を考えてみました。 受信側のプログラムを作ってみて下さい。


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Update 24/Nov/1998 By Y.Kumei
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